お供えに欠かせない「花」そこに込められた意味とは?
お仏壇の仏具である「三具足 ※」には、仏花を飾る「花立」が含まれています。
このことからも、花がお供えに欠かせない供物であることがわかります。
※ 「香炉」「燭台(火立)」「花立」で一組になる仏具のこと。
みつぐそく・さんぐそくと読む。
仏さまに花を供えるようになったのは、お釈迦様がきっかけだと伝えられています。
前世で修行していたお釈迦さまは、「燃灯仏(ねんとうぶつ) ※1」という仏さまに出会います。
お釈迦さまはこの方をご供養したいと思ったのですが、何もご供養するものがありませんでした。
その時、近くにいた花売りの女性から五茎の「青蓮華(しょうれんげ) ※2」という花を買い、ご供養したのが、お花をお供えする始まりなのだそうです。
※1 お釈迦さまが悟りを開き、釈迦仏となるという予言を授けた仏
※2 ハスの一種。鮮やかな青色をしている蓮
またお仏壇に花を供えることには、次のような意味があるとされています。
・生の短い花を供えることで、命の尊さ、世のはかなさを知り、生きている人の学びに生かす。
・風雪に耐えて咲く花を、人間が修行に耐え偲ぶことへの誓いを立てる姿になぞらえている。
・仏さまの「大慈悲(変わることなく、すべての人に平等。智恵に基づくため、相手を苦しめることがない)」を「仏花」で表している。
・美しいものをお供えし、仏さまをお飾りする。
・お供えする者の信仰心を養い、知恵を育てる。
このように、仏花は仏さまだけでなく、生きている人々にも大切なものなのです。
一般的には菊、仏さまの好きな花やブリザーブドフラワーも選択可能
仏花として、古くから使用されてきているのは菊の花でしょう。
平安時代(8~9世紀)に中国から伝わったと考えられていますが、それ以前に在ったという説もあるようです。
当時の菊は、観賞用はもちろん、薬や酒、食用としても使われていました。
また、香りに邪気を払う力があるとされていた、花が長持ちで、枯れにくく花弁が散りにくいことから、仏花として飾られるようになったといいます。
ただ、近年は洋花や故人の好きだった花を選ぶ傾向も増えており、それほど菊にこだわる必要はありません。
また生花でなくとも、造花やブリザートフラワーを飾っても問題はありません。
ただし、宗派や地域、家族のしきたりなどによっては、選ぶ花や飾り方に独特の決まり事や習慣があるため、不安があるならあらかじめ聞いておくといいでしょう。
「仏さまにお供えしてはいけない花」も
心をこめてお供えするのであれば、それほど花種にこだわる必要はない反面、「飾ってはいけない花」には注意が必要です。
基本的に刺のあるアザミやバラ、毒のある花は避けた方がよいといわれています。
・棘のあるもの:バラ、アザミなど
・匂いのきついもの:ユリ、カサブランカなど
・毒のあるもの:キョウチクトウ、ヒガンバナなど
・つた状のもの:朝顔、クレマチスなど
・傷みやすい/散りやすい花:椿・サザンカなど
なお、お供えする花の本数は奇数で、3・5・7本が一般的だということも覚えておきましょう。
大切なものは、仏花を捧げる人の心にある
仏花をお供えするのに必要なのは、何を選ぶというより、「故人を偲ぶ心」を忘れないことです。
「お供えしてはいけない花」を避けるなど、最低限のマナーを守れば、菊などの和花にこだわらず、洋花や生花以外の花(造花、ブリザーブドフラワー)を選択してもかまいません。
「色鮮やかな花が好きだった」「大輪の花を育てていた」ほか、故人の愛した花を仏壇にお供えすることこそが、よい御供養になるといえるのではないでしょうか。